愛されている、挑戦している、
を全員で共有できる組織に
中学卒業後、高校進学せずに就職。10種類ほどの仕事を経験後、不動産販売の会社にて営業職として働く。24歳の時に携帯電話の販売店を主力事業とした会社で起業。B to Cの経営の面白さ・厳しさに触れる。その後は、再び不動産販売の営業職、更に飲食店の経営を経て、2007年8月に不動産サービス業の株式会社プログレスを設立、代表取締役に就任。現在、売上高約60億円、社員数100名。GreatPlacetoWork(R) 主催調査の「働きがいのある会社ランキング(R)」において5年連続で優良企業として上位ランクイン。
業績は好調。
でも、社員は辛そうだった
経営に対する考え方が変わったのは2009年頃。当時は、一言で言うと“殺伐とした会社”だったかもしれません。それでも売上は好調でしたから、何の問題もありませんでした。しかしある日ふと、みんながつまらなそうな顔をして働いている光景が目に入ったんです。
思えばその当時のぼくは、社員に対してプレッシャーをかける以外のマネジメント手法を知らなかった。“目標を達成している/していない”に関わらず、とにかくもっと頑張れとプレッシャーをかける。仕事が大変なのは当たり前。仕事とはしんどいもの。その考えを貫いたとしてもしばらくは業績が伸びたかもしれませんが、その時に目に入った光景は「ぼくが手に入れたかったものと違う」と胸をざわつかせました。
そこで初めて、社長としての自分の仕事を振り返りました。ぼくは何のためにこの仕事を、この会社をやっているのだろうと。営業経験からモノ売りのイロハを知り、お金を稼ぎたいという気持ちで会社を始めましたが、お金持ちになるだけでいいなら、画家になりたいとか、歌手になりたいとか、そういう夢を持つ人に比べて、ある意味で無個性です。お金の先に、描きたい世界が無いなんてーー陳腐でつまらない目的で社長をやっているなと思いました。社員のつまらなそうな顔を見た瞬間、当時のぼくが結果として得ていたものは、自分が本当に求めていたものではなかったことに気がつきました。
社長は、社員から先に愛をもらっている
経営とは、つまるところ“愛”だと思います。照れますけれども。そしてぼくは“社長が社員を愛する”よりも前に、“社長が社員に愛されている”ことを忘れないようにしています。特にまだ歴史も経営資源も限られる小規模な会社だと、社長が語る理念や未来の絵空事に対して、社員は社長以上に本気で向き合い、自らの貴重な時間を会社のために費やしてくれます。よく社長は最も大きなリスクをとっていると言われますが、考えてみれば社員のみんなこそ、生活をかけて、将来をかけて、そういう大きなリスクを取って、何の実績もない会社で働いてくれているわけです。「この会社が好きだ」と一生懸命やってくれているわけです。自分は社員から、本当に多くのものを与えてもらっている。そのことを感じたとき、これからは社員がやりがいを持って楽しく働ける会社をつくろうと決心しました。 ぼくが会社経営の先に描くものーーそれは、愛されている、挑戦している、という体験を全員で共有できる組織づくりです。
そこから、まずは社員に対する愛を行動や態度で示すようになりました。すると会話の質も変化します。以前は、生産性が低い社員を目にするとサボっていると思って詰問していました。それは、社員に対して“自分のため、そして売り上げのために、社員は働いて当然”と決めてかかっていたからだと思います。社員はぼくに怯えていたし、ぼくが口を開くとみんなビクビクしていたと思います。今考えればなんてひどい社長だろうと思います(笑)。
今では働きが鈍っている社員がいれば、「なぜだろう、何か気になることでもあるのか」などと察するようになりました。こちらが先に社員の愛を信頼し考慮することで、社員もこれまでぼくが知ることのなかった、仕事への想いやアイデアを話してくれるようになりました。会社をよくする意見は、ぼくにとっては耳が痛いこともありますが、社員の口から聞けるようになりました。社長と交わした対話がたとえ1分であっても、それによって社内が活気づき、いい方向へ変わるーーそんな風土を今は大切にしています。
また、ぼくは社員に対して「業務以外でも人生を謳歌できるような経験や体験を提供したい」と思っています。もっと言えば「こんな人生があるとは思わなかった!」という驚きや感動を提供したい。社員の人生に貢献したい。それが、今自分が社長として会社をやっている目的です。
社員にとって毎日が
“生きる甲斐のある人生”であってほしい
社員の人生に貢献したい。その思いを実現するために設けた制度の一つが、“ドラゴンボール休暇”です。有給休暇以外で連続して10日間の休暇が取れる制度です。このネーミングには、世界中に散らばったドラゴンボールを集めるように世界を巡り、普段できない体験をしてほしいという想いが込められています。
この制度は、ぼくがトライアスロンのレースに参加するためロタ島に行ったときに思いついたものです。夜、美しい星空の下で考えごとをしていたら、仕事に活かせるインスピレーションを得ました。こんな素敵な場所で過ごせば、誰だって多くの気づきが得られるはず。それならば、自由なタイミングで長期休暇をとることを社長の特権にするのではなく、社員全員のものにしようと思い制度化しました。
ドラゴンボール休暇の取得には、条件があります。何をするかは自由ですが、何かしらの企画として申請することがルールです。たとえばゲーム好きの社員がいたとします。 “学生の頃のように、のんびりとゲームに興じたい”ではダメですが、“世界記録にチャレンジするために数日間ゲームに没頭したい”という理由であれば承認します。
ほかにも毎年1泊2日で、全社員が参加するワンプロ合宿も開催しています。ワンプロとは、OneProgressの略で、“プログレスは一つ”という想いが込められています。これは運動会などのアクティビティにチャレンジしてもらいながら、社内コミュニケーションの活性化をはかる場です。昨年は離島での登山、一昨年はチーム対抗の運動会などを行いました。
言葉にこだわりを持つことで
ポジティブな環境に
特別な体験を提供するだけでなく、いい職場環境に身を置いてほしい。常々そう思っています。働いている時間や職場にいる時間は、人生の大半を占めますので、職場環境は働く社員の人生に大きな影響を与えます。
だからこそ社内の“会話環境”にはこだわります。どんな目的で、どんな態度で発せられた言葉なのか。そういったことはとても注意を払いますね。プログレスでは、相手を責めるような表現、ネガティブな印象を与える言葉を、非推奨ワードに定めています。たとえば“問題がある”という表現は使いませんし、“おつかれさま”とも言いません。“問題”というのは、想定内ではない未知の未来に挑戦しているからこそ生まれている、という観点にたち、問題としてではなく“取り組むポイントの一つ”として扱います。「おつかれさま」の代わりに「お楽しみさま」、「間違っている」ではなく「効果的ではない」など。このように観点をシフトさせて言葉を言い換えることで、ポジティブな空気が生み出せます。
ほかにも、毎日シェアタイムを設けています。これは自分の気持ちや気づきを、周りの人たちと分かち合う時間で、朝礼や終礼の際にチーム毎に実施しています。ほかのメンバーがどんなことを感じているのか、どんな課題に取り組んでいるところなのかを共有する事で、業務上のやり取りだけでは築けない一体感をチームにつくり出します。
また、こういった取り組みが、組織の中にどのようなコミュニケーションが充満しているかを把握し、最も効果的なコミュニケーションが存在するようにマネジメントする、ということの入り口にもなります。
支配型ではなく、
共感型のマネージャーを目指してほしい
プログレスでは、一般の組織図とはヒエラルキーを逆にしています。スタッフが一番上、その下にマネージャー、さらにその下に社長という位置づけです。昇格することは偉くなることではなく、支えるべき仲間が増えることを意味します。なかでもマネージャーは組織全体を下支えする重要なポジションというわけです。
また、なるべくフラットな組織を目指しているので、基本的に役員、マネージャー、メンバーの3階層に留めています。これには反対意見もあって「メンバーを昇進させて役職付きにしたい」と言うマネージャーもいます。ぼくに言わせれば、そういったマネージャーは、メンバーに対して本当のやりがいを提供できていないのです。だからこそ役職というわかりやすい報酬を与えることで、モチベーションを維持しようとする。それは、マネジメントのあるべき姿ではありません。マネジメントスキルを身に付けてもらうためにも、今後も役職は増やしません。
また「自分に役職を与えてほしい」と主張する人もいますが、肩書がないと他人に影響を与えられない人にはマネージャーになってほしくはありません。役職名という権威でではなく、人間性、仕事ぶり、言葉を通してメンバーを巻き込んでほしい。支配型ではなく、共感型のマネージャーを目指してほしいのです。
プログレスが理想とするフラットな職場像は、子どもの頃の“秘密基地”。仕事場というよりも、それぞれの得意分野や個性、熱意がある人たちが仲間として集う場所。遊びとして楽しく、ワクワクして没頭するものが詰まった場所です。やっぱり自分たちがやりたいことを実現するために会社に来てほしい。そんな秘密基地には、階層や序列は必要ありませんよね。
Talknoteからは、
心の動きまでもが見えてくる
社内のコミュニケーションには、Talknoteを使っています。Talknoteの最大の価値は、話題やテーマごとにグループが作成でき、投稿やコメントで情報を整理することができるので、情報が埋もれず確認しやすいこと。以前は他のSNSツールを使っていましたが、時系列で進んでいくと過去の話題が埋もれてしまうことが不便でした。それに会話の内容を遡るのに一苦労で「あの件は、どうなったっけ?」と周囲に聞いてばかりだったのです。
またTalknoteを使うと、個人のコミュニケーション量の増減が一目で把握できるので、社員の心の動きまで見えてきます。投稿数が減っている人には「最近どう?」と声をかけることもあります。各社員のアクセス時間や、コミュニケーション量を確認しながら、業務中の表情や最近の業績と照らし合せていくと「辞めたいとか考えているかもな」とか、「ヘこんでいるな」とか、「マネージャーとの相性が芳しくないのかな」とか、いろんなことが見えてきます。
情報をオープンにすることは、
メリットばかり
Talknoteを使うもうひとつの理由は、情報共有のためです。ほとんどのグループはすべての社員が内容を知れるオープングループでつくり“誰がどんな仕事をしているのか”、“どんなことを考えたか”などを気軽に共有しています。
マネージャーは毎朝Talknoteに、その日の自分のコミットメントを投稿します。「今日はこれくらいの売上を上げます」、「何々をここまでやります」というような内容を投稿し、夜にはその結果を共有します。これに、いいね!を押しあうことでも繋がりを体現しています。
社員全員のスケジュール共有にも取り組んでいます。遅刻や欠勤の理由、長期休暇の予定などを投稿するグループがあり、Talknoteを見れば社員の勤怠状況も知れます。
運用してみて気に入っているのが[ミーティング速報]というグループです。すべてのチームが、すべてのミーティングの議事録を公開するグループで、ミーティング終了後10分以内に速報を投稿する決まりです。すべての仕事は相互に関係しているので各所で何が議論され、何が決まったかを把握できないと、会社全体が間違った方向に進みかねません。それを避けるために、共通の議事録フォーマットを使ってタイムリーに情報共有をします。ここではまず速報を投稿して、のちほど編集機能を使って詳細を加筆するのがルールです。こうすることで同じような投稿の繰り返しを回避し、常に最新情報だけを把握できます。
Talknoteを使うようになってからは、メールや他のSNSツールだと連絡を控えてしまうレベルの情報も共有されるようになりました。わざわざ報告するレベルの話ではないものの、隠しておきたいわけでもない情報です。そういった情報が共有されると、コミュニケーションの質はグンと高まります。
個人的にはTalknoteで繰り広げられるコミュニケーションの量だけでなく質も重要視しています。文句や不満が生まれていないか。仲間を力づけるポジティブな会話でチームが満たされているか。これらは自然とみていても注意してしまうポイントです。全社員が確認できるオープングループになっていれば、自分が参加していないグループでも検索して閲覧できるのも便利です。
Talknoteで情報共有をする文化ができたので、今後は理念の浸透にも一層取り組みたいですね。具体的には、社長メッセージのグループをつくって、ぼくからのメッセージを直接発信していく予定です。組織が大きくなり、全員と細やかにスピード感を持ったコミュニケーションを取ることが難しくなっていますが、自分の考えをなるべく自分の言葉で伝えていきたいです。
これからも情報をどんどんオープンにしていくつもりです。すればするほど社員たちの一体感は高まります。彼らも会社から信頼されている実感が増し、会社への帰属意識も高まるでしょう。そうなっていけばプログレスというチームの一員として、どんな困難な状況が起きてもみんなでコミットに向かっていけるはず。Talknoteによって社内コミュニケーションの質が高まれば、組織としてまだまだ強くなれるわけです。そんな未来を見せてくれる、Talknoteは心強い存在です。