社内コミュニケーションで、
会社のいい空気をつくりだす
1974年生まれ。2001年8月に有限会社ナッティースワンキーを設立。2001年に10席のラーメン店を開業し、2003年にはダイニングバーの展開を開始。2007年に株式会社NATTY SWANKYに組織変更。2011年にこれまでのターゲット層を拡大するべく「肉汁餃子製作所ダンダダン酒場」をオープン。フランチャイズ展開も開始し、2017年12月現在、東京を中心に51店舗を展開中。2019年までに100店舗の出店を目指している。
挨拶が会社の印象をつくる
僕は、自分がされて嬉しいことを相手にもしたいという考えをベースに持っていて、その代表的な行動として、挨拶をとても大切にしています。
ダンダダン酒場の1号店を出店した当時は、会社が停滞していた時期から少しずつ良くなってきて来たタイミングで、その頃はいつも「会社がもっと良くなるにはどうしたら良いんだろう」と、店長を集めて会議室で話をしていました。僕はもともと挨拶をとても大切にしていたので、会社を良くする為に、どうしても良い挨拶を取り入れていきたいと考えていたのですが、経営者の自分から、これをやろうぜと言い出すと強制になってしまうので、あまり好きではありませんでした。なので、それとなく挨拶のメリットをヒントとして伝えていたら、店長達が「挨拶をやりましょう」と言ってくれました。
その場で、いい挨拶とはどんなものなのかを話し合い、それぞれがいいと思う挨拶を順番にやっていき、その中から一番良かった挨拶を動画で撮って、NATTYSWANKYの”いい挨拶”の基準として決めて、各店舗に伝えていきました。
店舗をまわって指導をすれば、すぐにいい挨拶をすることができるようになるんですが、習慣化には至らないこともあって、しばらく経つとまたいい挨拶が出来なくなってしまう事もありました。なので、気づいた時には毎回すぐに店長を集め、どうすれば常にいい挨拶が出来るようになるか、更にどうしたらもっといい挨拶になるのかなど、お辞儀の角度を決めたりしながらブラッシュアップを繰り返し、今では全員が常にいい挨拶をすることが出来るようになりました。
店舗では5〜6年前からいい挨拶を徹底していたのですが、本社ではそこまでの徹底はしていませんでした。
当時のオフィスは人数規模に対しては少し狭く、人がワシャワシャいるような雰囲気の空間だったこともあり、あまり挨拶が気になる場面はありませんでした。その後2016年6月に新しいオフィスに移転したのですが、そこはスペースも広く、窓からの景色もよかったこともあって、その場に立った時、ここから会社をもっと大きくしようという気持ちとともに、広いオフィスにみんなの挨拶が気持ちよく響き渡っているイメージが湧きました。
このオフィスには銀行の担当者の方から採用面接を受けに来る学生まで、たくさんのお客様が来ます。店舗では既にいい挨拶をしはじめていたので、それに負けず本社も全力で挨拶をしよう、と決めました。
最初の頃は、それぞれが良いと思うやり方でお客さんに挨拶をしていましたが、ある時僕が「みんなで一緒に挨拶をしよう」と声を掛けたところ、これはいい挨拶だねとなって、それがあっという間に習慣化し、今では皆が声を揃えて気持ちのよい挨拶をすることが出来るようになりました。
ちなみに挨拶の仕方は教育用の動画アプリを利用してお手本を共有して、皆が同じ挨拶を出来るようにしています。
挨拶を変えたことによる圧倒的な変化は”周りの反応が変わる”ということです。店舗でお客様の反応が変わることはもちろん、オフィスにいらっしゃるお客様、従業員も含めて、全ての人の雰囲気に影響があります。”挨拶が全てを制する”と言っても、過言ではないぐらい大きな変化がありました。
人としての在り方が大切
僕はあまり怒るタイプではないですが、人としてどうあるかという部分については、指摘するようにしています。本人も失敗したなと思うような大きな失敗については自分でも気づいて反省するので指摘はしません。
例えば会議やイベントなど、みんなで集まって何かしようとしている時に隣の人としゃべっていたり、本気で取り組もうとしている時に茶化す、飲み会でまったく喋らない、集合写真を撮る時にいつまでも端っこの方にいるなど、その場をよくしようと一生懸命な人がいるのにそれに協力的ではない姿勢に対しては本気で注意します。みんなで何かをやるときはもちろん、何かを楽しむときも本気で参加して楽しんでほしいからです。場の空気を乱してしまうのは気の緩みですし、そのちょっとした気の緩みが後に大きな問題に繋がることがあると考えているので、そのようなことを気づいた時には本気で注意するようにしています。
仕事のことについては幹部メンバーがしっかり指導してくれているので僕は基本的に注意しません。あえて注意をするとしたら、お店に入ったときに挨拶に関して姿勢や声のトーンが違うなどについてくらいで、業務のことは本当にそれぐらいです。僕が人としてのあり方や姿勢を細かく注意するのは、周りの人のため、そして未来のためです。
これを意識し始めたのは15歳の頃で、それは今でも変わっていません。会社の創業当初にも何度かクレームを頂いた事がありますが、その原因も完全に気の緩みから来たものでした。ちょっとした気の緩みで大事故が起きかねないことは経験からも身に染みているので、細かいことをちゃんとできるようになることが、自分や自分の周囲の人のためになると考えています。僕の仕事観は”やるなら一生懸命やってくれ”です。なぜなら、仕事に集中できていないときに問題は起こり続けると感じているからです。一生懸命やることが大事です。
僕は会社の飲み会などでも、どんなに酔っていても常に気を張るようにしていて、そうやって生きたほうが得だと思っていますし、仕事で手を抜くということは考えられず、それが当たり前だと思い今まで生きてきました。決して押し付けたりすることはありませんが、生き方として何事も一生懸命やるという仕事観をみんなに伝えていきたいという想いを人一倍強く持っています。
店舗運営に関しては、人材面も含めて口を出すことはなく、仮に思ったとしても幹部に、こうしたほうがいいんじゃないかと助言するぐらいで、その場でダメ出しをすることはありません。幹部メンバーがしっかり店舗を管理しているので、僕が顔を出すときは普通に飲みに行くためにお店に行くことが多いです。ただ、例えば餃子の焼き色があまい、盛り付けが雑だったり、商品のクオリティが担保できていない時は、1人のお客さんとして、かつ社長として、オーダーをやり直させることはあります。逆に良いなと思ったときは、すごく褒めます。
愚痴・悪口をやめたことで急成長
これまで、人としてのあり方や姿勢について日々細かく注意をしてきましたが、その中でも、明確に業績の変化に繋がったと思うことは愚痴・悪口を一切やめたことでした。現在創業17年目で売上は26億円程です。最初の10年間は外食事業では、2億円前後の売上をずっと推移している状態が続いていましたが、愚痴・悪口をやめた事をきっかけに会社が急成長しました。
“餃子とビールは文化です”のメッセージを掲げているダンダダン酒場ですが、この業態を考えたのが現在取締役社長を務める井石です。
井石とは古くからの仲で様々な経験を共にしてきたこともあり、僕は彼を尊敬し、彼が良いと言ったものを応援したいという気持ちを強く持っています。例えば社員の面接は、社員数が20名規模の頃から全て井石に任せています。役割として、僕は現場を見ないと決めているので、現場を管理している井石が良いと言えば、その意見を尊重しています。現場を見ていない僕が良い悪いを判断するのは違うなと思っていますし、彼が信じたものは僕も信じています。
今から6年程前、ダンダダン酒場創業後辺りに、色々とうまくいかなかったことを一度リセットして再出発しようとしたタイミングがあって、経営理念や行動指針を井石と2人で考えて、これからどうしていこうか、どんな人と働きたいかなどの話し合いをしました。その中の一つに、ポジティブでいよう、愚痴・悪口を言うのをやめよう、という項目をつくり、実践することを決めました。業績が悪いとネガティブになり、どうしても従業員同士の愚痴・悪口が増えていきます。
止めなければいけないと思ってはいたものの、止めるという行動に移すことが出来ていませんでした。
想いは変わらないものの、実際にやれているか、やれていないかを考えた時に、やれていなかった事をやるという努力をした結果、それからの業績は本当に良く、今の会社の雰囲気が良いのもそれを徹底し、また習慣化した事が急成長に繋がった一番の理由だと思っています。とにかくやれる事はやると決めたことにより、社員とのコミュニケーションを取る時間も増えました。
愚痴・悪口をやめることで業績が上がるのはなぜなのかと疑問に思う人もいるかもしれませんが、会社も仕事も全て人が行うことでしかなく、そこに集まる人がつくる空気感というのはすごく重要です。空気や雰囲気は自然につくれるものではなく、意識してつくっていくものです。いい空気をつくるために愚痴・陰口を止め、いい空気だから働きやすくなり、働きやすいから業績が伸びる、業績が良いからよりいい空気になり、働きやすくなる。そういうサイクルをつくりました。
やれることは全部やる
当初20名ぐらいの組織の時に読書感想文制度を始めました。
参加した勉強会の課題で読書感想文を書く機会があって、日頃はインプットもアウトプットも頭の中で完結してしまっていることが多い中で、実際に文字に起こしてアウトプットしてみると、様々な発見に出合えました。それが意外と気持ちよく、社員にも習慣的にやってもらいたいと思い、愚痴・悪口をやめた時と同時期に読書感想文も制度として始めました。
若い社員やこれから幹部になりたいと思っている人は将来のことを考え、本を読み知識を増やすことや、インプットやアウトプットの仕方も身に付ける練習をしておいたほうが自身の為になるのではと僕は思っています。
提出された感想文は全て目を通しており、今は100名中75~80名ぐらいが毎月提出してくれています。提出してくれた社員に対しては数千円の手当てがつき、感想などのフィードバックはありませんが、提出してくれたことへの努力を認めるようにしています。あくまで読書感想文は書く人が自身の為に行っている取り組みです。もともと本を読むきっかけは自分が勉強をしてこなかったからですが、知識がなくて何かをするのと、知識を得たうえで何かをするかでは大きな違いが生まれると思っているので、社員にも学びになるきっかけを与えていけたらいなと思っています。
6年前に業績が急成長したのはこれらの様々な取り組みの複合的な結果ですが、原則は、基本の考え方とコミュニケーションだと思っています。
当時は挨拶から始まり、愚痴・悪口を言わないことなど様々な変化を起こしました。とにかくやれる事を全部やりました。その中でも、皆とコミュニケーションを取る時間を増やし、社員と毎日毎晩、時には朝まで飲んでいたりもしました。
また、会社の事をもっと知ってもらったり、社員同士の繋がりなどを増やすために、2年程前から積極的に研修や会議、表彰を行う事にしました。社員が交流する機会を増やすにもお金がかかるので、お金が使えるか使えないかでやり方は大きく変わってきますが、事業のステージに合わせて、その時にやれる範囲でやれることを全力でやっています。
例えば、アルバイトのメンバーに本社へ来てもらい、会社の歴史や挨拶の仕方など、3時間かけて教えるアルバイト研修や、会社の歴史、考え方、コミュニケーションの取り方、ティーチングの仕方、信頼関係の築き方などを学んでもらい、最後のテストを合格しないと店長にはなれない店舗責任者候補向けの研修もあります。研修合格者は、ネームプレートが変わったり、刺繍が入ったり、見た目で分かるようになっています。ちなみに店長になると金のネームプレートになります。
そして、階層別会というものがあり、この勉強会は、一般社員、副店長や店長など、横のコミュニケーションを強めたいと思い、同じレイヤーのメンバー同士仲良くなってもらって会社をもっとよく知ってもらうように心がけています。女子会や、サークル活動なんかも活発に行われています。
エリアを管理している幹部のミーティングや、衛生管理や総会などのプロジェクト単位のミーテングもたくさんあります。これらのプロジェクトはそれぞれやりたい人が有志のグループでミーティングを行って進めています。
さらに、ダンダダンアワードという表彰の取り組みや、餃子を握る技術を競う選手権もあります。
僕が1時間に300個の餃子を包むことができるので、月一回の検定で3ヶ月連続で同じ300個包める人がいたら金のアンベラ(餃子の餡を包むときに使う道具)を名前入りでプレゼントしています。年間MVPや、アルバイトのメンバーも含め課題の学習量のトップ10名にディズニーランドチケットをプレゼントしたり、とにかく一生懸命何かをやってくれた人を表彰する取り組みに力を入れています。
社内コミュニケーションを大切にしている
Talknoteを導入するまでは、LINEでコミュニケーションを取っていました。
僕自身は、飲食の経営者仲間から聞いて5〜6年前からTalknoteを知っていましたが、自分がアナログな人間であることや、コストを考えてLINEを使っていました。当時はまだ全社員と直接コミュニケーションを取れていた時期だったこともあります。でもその時から、絶対にいつかはこのツールを使うことになるだろうと思っていました。
LINEからTalknoteに切り替えたのは、様々なグループが無尽蔵に存在していたり、曜日や時間帯を問わず通知が多すぎたりすることによって、訳がわからなくなってきたという問題意識を解決したいと思ったからです。
例えば、様々なグループが出来すぎてしまったり通知が多すぎたりすると、見ていて話の展開がわからなくなってしまい、言った言わないの議論になることもありました。社員が増えてからは、アイコンが本人の顔と関係のない写真であったり、本名とは違う名前が登録されていたり、メッセージが来ても誰なのかわからないことも頻発に発生し、混乱が起こっていました。
これらの感じていた問題意識を解決する為に様々な製品と比較をしましたが、「システムが優れているTalknoteがいい」と、個人的にも思っていたことや、同業の経営者仲間からもオススメされていて、これはもう導入しないわけにはいかないな、というタイミングが来たことがきっかけで、Talknoteの導入を決めました。
僕は来るべきタイミングで会うべき人に会っているはずだと信じていて、いい出会いはいい結果をもたらすと思っています。これまでもそうゆう生き方をしてきているし、これからもそうしたいと思っています。
機が熟してTalknoteを導入することになりましたが、今やうちの会社はTalknoteなしではやっていけないです、本当に。一生、解約はないと思っています。
Talknoteには共有したい情報毎にグループをつくる事が出来る機能があり、売上や新店舗情報などの報告をする業務関連のものから、会社のいい空気をつくり出していけるようなグループまで自由につくる事ができます。
僕が主に投稿しているのが”社長の一言”というグループで、これは月1回のペースで投稿しています。最近は僕の投稿にアルバイトのメンバーからもコメントが貰えるようになり、すごく嬉しく思っています。
例えば、業務系のグループとして、覆面調査を行っている”ファンくる”からの調査結果をいち早く確認するための、”ファンくるグループ”という結果メールを転送するグループを作成しています。
このグループは全店が調査結果を見れるよう、オープンにしているので、通知が来るのは社員だけですが、アルバイトのメンバーも含め全員確認することが出来ます。売上を共有する「売上グループ」も全員で見ることが出来ます。
いい空気をつくるためのグループとしては「バースデーグループ」という、誕生日のメンバーに対して「おめでとう」と投稿したら、他のメンバーも全力でお祝いするというグループがあります。それに合わせて実際に、本人の写真付きのケーキを会社から送るという事も始めました。そしてさらに、その事が「うれしいたのしい大好き」というグループに投稿されたりします。このグループは、お客様から手紙をもらったなど、嬉しいことや良いことがあった時に投稿するグループです。Talknoteを始めた時から「うれしいたのしい大好き」みたいな、会社のいい空気感をつくり出して伝えられるようなことができるグループをつくりたいなと考えていました。
新店舗のオープン情報や周年記念情報などは、文章のみでは伝わりづらいことをより伝わりやすくするために、写真を撮ってアップするように指示しています。僕のメッセージは、結局は”本気でやろう”と”いい空気をつくろう”の2つだけなので、Talknoteを使う中でも徹底するようにしています。Talknoteはいい会社をつくるための必須アイテムだと思います。
また、会社のことをもっと知ってほしいという強い想いがあって、社内報も発行しています。社内報はTalknote上ではなく、あえて紙に印刷して手元に残るようにしました。社内広報チームメンバーがTalknote上で「もうすぐ創刊されます」と言ってくれたり、1日ごとに創刊をカウントダウンしてくれたりと、盛り上げてくれます。
そして社内報を受け取った店舗のメンバーたちが、Talknoteで「届きました!」という報告もアップしてくれたりするので、そこでまたコミュニケーションが生まれ、紙でつくる良さみたいなものも感じています。
会社を良くするためにやりたいことがたくさんある
“エリア鬼ごっこ”という面白い企画も行いました。
これは、鬼が書いてあるうちわを他店舗に持って行き、受け取った店舗は、別の店舗に渡しに行くルールで、期間終了のタイミングで鬼のうちわを持っていた店舗が、全員自腹でテーマパークに行くというルールです。先日、男性だけでテーマパークに行った報告がグループに投稿されていました(笑)
このゲームによって直接他の店舗に足を運ぶので、店舗間でのコミュニケーションが生まれたとても素晴らしい企画でした。
”最強店舗”という取り組みもあって、これはオールスター店員で揃えた店舗を実際につくるという企画です。年1回、投票で選ばれた社員とアルバイトのメンバーで期間限定の店舗をつくってダンダダン酒場の本来あるべきサービスの姿を体現する、というものです。他店舗の従業員の評価は結構難しいと思うのですが、当社の場合はヘルプで他店舗に行く事も多いので、意外に他店舗の従業員の働きっぷりを目にする機会があります。イキイキとしている従業員は目を引くので、そういう人が票を集めるイメージです。選ばれた従業員が集められた期間は、売り上げがものすごくアップします。声出しも圧倒的で、最強メンバーは本当にすごいです。
まだまだ実現出来ていない案もありますが、うちならではの会社の取り組みはたくさんあります。
正月には、僕と井石でお年玉を全店に配りに行く企画があり、くじ引きの箱の中に”月給1万円アップ”とか”時給100円アップ”とか、中におみくじも入れたりして盛り上がりました。
また、覆面調査の点数が高かった店舗に賞金を出して飲み会の費用に使ってもらったり、家族の方に会社見学なんかもしてもらっています。地方から親御さんがいらっしゃった時はいつでも会社に連れてきていいよ、と伝えています。 会社を良くするために、もっと企画をしたいし、もっともっとやりたいことがあります。
会社のことを考えるのは本当に楽しくて、嫌な気分になっている時間はほとんどないですね。嫌な気分の時間は年間で合計しても40分ぐらいしかないんじゃないかな、と思います。