人の能力を最大化する
組織にするために

株式会社ギフト
代表取締役
田川
翔様

1982年、千葉県生まれ。高校卒業後、横浜のラーメン店でラーメンづくりと接客のノウハウを学ぶ。6年間の修業期間を経て、2008年に「横浜家系ラーメン 町田商店」を開業。2009年には株式会社町田商店(現・株式会社ギフト)を設立。町田商店を中心として次々に事業を展開し、2016年にはニューヨークの「Ramen Lab」への期間限定での出店を皮切りとして海外事業をスタート。同年、シンガポールに直営店第一号をオープン。2018年現在で、国内54店舗、海外2店舗の直営店を展開中。急成長企業として、飲食業界のみならず幅広い分野から注目を集めている。※2018年9月現在

支えられたことで気づいた
自らのちっぽけさ

今でこそ50店舗以上の直営店を展開している株式会社ギフトですが、始まりは一軒のラーメン屋でした。2008年にオープンした「横浜家系ラーメン 町田商店(現:町田商店本店)」です。開店当初のぼくは自信満々でした。行列のできる繁盛店で6年間みっちりと修業を積んだ。きっとすぐに人気店の仲間入りを果たして、お金もどんどん稼げるはずだ、と。ところが、現実はそんなに甘くはありませんでした。味づくりも資金繰りもまるで思い通りにいかず、すぐに自信を失います。

そんなぼくを支えてくれたのは、立ち上げから一緒に頑張ってくれた仲間たちです。ぼく以上にぼくの可能性を信じて、励ましてくれました。人ひとりができることなんてたかが知れている。周囲がそう気づかせてくれたおかげで、ぼくは気持ちを立て直せました。この経験があったからこそ、初年度は月商300万円、翌年度は400万円、翌々年度は500万円と、着実に成長してこられたのだと思います。

2店舗目を出店する際には「人は人の力を見誤ってしまうことがある」と気づかされました。ぼくが2号店に専念するために1号店の運営を、立ち上げメンバーのひとりに任せたところ、彼はぼく以上に巧みに店舗を切り盛りしてみせたのです。実のところ、ぼくは彼のことをそこまでデキる人材だとは思っていませんでした。勝手に彼の能力の限界を決めつけ、成長に歯止めをかけていたわけです。創業間もない頃にこういった経験をしたからこそ、ぼくは「いかに人の能力を最大化するか」に知恵を絞って、組織づくりに取り組んできました。

今の時代、「働いている」という雰囲気のオフィスはそれだけでダメです。そこで個々のデスクを固定しない「フリーアドレス制」を導入しました。社員のほとんどは営業や企画、マーチャンダイザー、デザイナーですから、ノートPCさえあれば、どこにいても仕事はできます。だったら他の社員と積極的にコミュニケーションをとるためにも、固定デスクに縛られないほうがいいですよね。

成長を促進する逆ピラミッド型の組織づくり

「人の能力を最大化する」には、まずは部下を信じることが肝心です。すべての従業員に対して「絶対にこの人は優れた結果を出せる」と思って接しています。伸び悩んでいる人に「できない人」という烙印を押すのは簡単ですが、マネジメントの役割は「できるようにすること」です。部下が力を発揮できていないのなら、それは自分の接し方が間違っている。店長クラス以上の従業員には、こういった姿勢で取り組むことを徹底してもらっています。

その人の力を最大限に引き出すコツは、完全に任せることです。短い期間でもいいから、すべてを任せてみる。その上で、できるかどうかを判断します。この繰り返しが一番です。子どもに自転車の乗り方を教えるときも、支える手をこっそり離してみたら意外とうまく乗れてしまった、ということがありますよね?隣でずっと指図をしていると、その人の本当の力量はわからなくなるものです。だからこそ一度手放します。

また、弊社は一般的によくあるピラミッド型組織ではなく、逆ピラミッド型組織のため、昇進するにつれてポジションは下がっていき、以前より多くの人を支えることになります。グリストラップという厨房排水装置の清掃といった、誰もが敬遠しがちな仕事ほど、立場が上の人間が率先して取り組むのはそのためです。役職が上がったからといって「自分が偉くなった」と勘違いして傲慢な態度をとる人材は、どれだけ優れた売上げを立てても評価されません。逆に役職が上がれば上がるほど謙虚になり、部下の成長を促せる人材ならば、売上げのいかんを問わず高く評価されます。このようにマネジメントに何が求められているかを明確にすることで、上に立つ者の力を引き出すことも同じく重要です。

株式会社ギフト インタビュー風景

スキルの見える化と、理念の共有で人を育てる

従業員の成長のために、制度設計の面でも工夫をしています。そのひとつが「ポジション習得表」という制度です。「洗いもの、ホール業務、仕込み業務、麺上げ」など各ポジションを7つのランクで評価します。ランクに応じて給料が上がり、平均ランクが5点以上になると店長試験を受けられる仕組みです。麺上げであれば「時間あたりに何人分のラーメンをさばけるか」と、可能な限り数値評価するのがポイント。具体的な数値目標があると、仕事に向かう従業員の姿勢も自ずと変わってくるものだからです。

この評価制度を導入してわかったことがあります。ラーメン店で働いた経験がない人ほどスピーディに成長するということです。経験者はどうしても斜に構えてしまうのでしょうか。素直さがあっての成長です。実際、弊社では飲食業界未経験から1年で店長になったものもいます。

技術も大切ですが、内面の成長も重要です。これを促すために月一で実施しているのが理念研修です。ここでは新入社員やキャスト(アルバイト)を対象として、弊社の理念を一つひとつ紐解いて、ディスカッションを重ねます。また、Talknoteを利用して幹部や店長が毎日持ち回りで行う「理念投稿」も、理念を共有する上で有効です。弊社の理念が日々の業務のなかでどう生かされているかを、具体的なエピソードとともに紹介した投稿は、キャストを含む全社員が閲覧できます。

弊社のように飲食店をやっていると、全社員で集う機会はなかなか持てません。だからこそ常に「社長や幹部が何を考えているのか」「会社全体として何を目指しているのか」をコンスタントに発信していくことが大切になります。こういったコミュニケーションの蓄積によって全社員が価値観を共有することで成長していけるのです。

お店と人への先行投資は、惜しむべからず

事業を拡大するにあたって、ぼくにはひとつの哲学があります。「店舗にも人にも投資は惜しまない」というものです。常識的に考えると、出店コストも人件費も安いに越したことはありません。しかし、それでは事業の成長は鈍化します。だったら可能な限り投資したほうが、結果として収益も大きくなる。これがぼくの持論です。

出店時の物件選びでも考え方は同じです。飲食店だった物件を居抜きで使ったほうが初期コストは抑えられますが、弊社ではアパレルなど異業種の物件を積極的に選択します。なぜなら、お客さんに与えるインパクトを重視しているからです。これまでファッションブランドだったところにラーメン店ができると街の景色がガラリと変わり、人目にとまりやすくなります。実際に、2号店に選んだ物件もコスト的にはかなりのチャレンジでしたが、結果はついてくると信じて投資しました。この戦略に則って投資をすると、新規出店直後の売り上げが見込みやすくなります。

投資を惜しまないのは、社員に対しても同様です。「ギフトに入って自分がすごく輝けた」と感じられれば、社員は会社に対して強い愛着を持ってくれます。だからこそ小さくてもいいから、なるべく早く成功体験を積ませたい。成功体験の最たるものが、報酬アップです。基本的な給与水準を高く設定するだけでなく、昇給にも積極的なら、店長のインセンティブも充実させてきたのはそのためです。報酬が上がるということは、自分の力量が評価されたということ。これは自信にもつながります。その自信は、さらなる成功を呼び込みます。この正のスパイラルには、投資を補い余りあるほどの結果が見込めます。

株式会社ギフト インタビュー風景

ラーメン愛があるからこそ、本当に喜ばれるお店に

お店や人に対して先行投資を続けてきた結果なのか、現在は国内外に50店舗以上の直営店を展開するほどに成長しました。成長戦略や優れた組織づくりも大切ではありましたが、ここまで成長してこられたのは根本にラーメンへの愛情があったからにほかなりません。

ぼくは物心ついた頃から大のラーメン好きです。特に幼少期を過ごした千葉で、「ニューラーメンショップかいざん」と出会ってからは、ずっとラーメンに夢中です。当時から繁盛店とそうではないお店の違いを観察するようになり、「おいしいラーメンを作れれば繁盛店をつくれる」というシンプルな結論に達したことが、ラーメンの道に進むきっかけになりました。

高校1年のときには、横浜のとある家系ラーメンに出会います。コッテリとした家系ラーメンなのに最後までおいしく食べられる味と、気持ちのよい接客が印象的で、ここでなら理想の飲食店を作るノウハウが学べると確信しました。幸いなことに、高校卒業後に店長からお誘いを受け、ここで6年間働けたことが現在のぼくの礎になっています。

ぼくにとってラーメンは好きな仕事ではありますが、それ以上に食べ物として好き。今でも年間250食くらいはラーメンを食べています。しかも勉強としてではなく、純粋に食べたいからです(笑)。従業員たちも同様です。SNSなんかで見ていると休みの日でもラーメンを食べています。みんなで飲みに行っても、シメはラーメンとか(笑)。

「好きこそものの上手なれ」とはいいますが、自らのビジネスへの愛は重要です。愛情を持てないと業績が下がっても理由がわかりません。一ユーザー、一ファンとしての目線が大切ということです。かつて弊社も他の業態に手を出したことはありましたが、今ではラーメン一筋。そうでなければ、本当にお客様から喜ばれるお店は作れないと実感しています。

株式会社ギフト インタビュー風景

Talknoteは、組織の一体感を醸成してくれる

Talknoteに出会ったのは、ちょうど組織が急成長する過程で、コミュニケーションの質を高めることが急務だと感じていたときです。既存のSNSツールを利用したこともありましたが、うまくいきませんでした。仕事とプライベートの情報とが混在してしまうのが難点だったのですよね。

Talknoteについては、仕事に関するコミュニケーションや情報発信を一元化できるのが便利で導入しました。フォルダごとに自分の欲しい情報を取り出せる利便性は、他に類を見ません。Talknoteがインフラとして根付いてからは、社員とのコミュニケーションが本当に楽になりました。

今では、キャストにもTalknoteに参加してもらっています。その分の費用がかかっても導入したかったのは、彼らの力も最大化したかったからです。お客さんからすれば、正社員もキャストも同じ従業員ですから、彼らの力をいかに引き出すかは、飲食店にとって重要な課題になります。

キャストにとっては給与も大切ですが「楽しく働けるか」も大切です。ここでもTalknoteが重宝します。さまざまな社内イベントを知らせる「ギフトニュース」、社内の部活動について発信する「部活動」、キャストの素晴らしい接客を共有する「神対応」など、あらゆるポジティブな情報を社内共有することで、この職場の「楽しさ」を上手に伝えています。

こういった施策のおかげで、社員登用されるキャストも増えています。ぼくらにとってはキャストからマネジメント層まででひとつの組織です。ここでの一体感を醸成するインフラという意味で、Talknoteはもはや欠かせないツールとなっています。

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